お見舞い品のマナー、皆さんは自信を持って答えられますか?
なんとなくわかっているつもりでも、いざ贈る場面に遭遇すると
「あれ、何が良くて何がダメなんだっけ?」
「花か果物を贈ればいいのかな?」
とあやふやになる人もいるのではないでしょうか。
私も記憶があいまいで、ネットで検索したり家にあるマナー本を引っ張り出したりして、そのつど確認しています。
しかし贈る機会はそうないので、せっかく覚えても時間がたつと忘れがちに。
さらにコロナ禍以降は病院のルールが変わり、両親が相次いで入院したときは戸惑うことが多々ありました。
親なので正式な「お見舞い」とは異なりますが、コロナの真っただ中で面会ができなかったのはもちろん、生花や食べ物を渡すのもNGでした。
感染拡大が落ち着いてきた今も、引き続き面会を制限している病院は少なくありません。
そうなると、お見舞いしようにも
「いつ、どうやって品物を渡せばいいの?」
「そもそも行かないほうがいい?」
といろいろ疑問がわいてきますよね。
この記事では
- 病院のお見舞い事情の変化を知りたい
- お見舞い品のタブーやマナーをおさらいしたい
という人に向けて、基本的なお見舞いのルールを紹介します。
お見舞いは、贈り物も訪問も下調べをしっかりすることがカギです。
相手を心配しているのに、マナーを知らないせいでいつの間にか失礼な振る舞いをしていたら悲しいですよね。
事前に状況を確認しマナーを守ったうえで品物を選べば、喜んで受け取ってもらえます。
お見舞いもアップデートが必要です!
病院のお見舞い事情の変化
テレビドラマなどでは、花や果物を持ってふいに病室を訪ねるシーンがよく映りますよね。
つい今も同じだと錯覚しそうですが、品物を持参してアポなしでお見舞いする従来のスタイルは、コロナ禍以降大きく変わりました。
以前のままの感覚でお見舞いしようとすると、相手や家族、病院に迷惑がかかるので注意しましょう。
面会の可否は病院によりさまざま
面会については
- 制限なしで可能
- 制限付きで可能
- 全面禁止
と病院により異なります。
いったん制限が緩和されても、地域や病院内の状況しだいで再び禁止になることもあり一定ではありません。
第1段階として、病院のホームページをチェックしてみましょう。
「制限付きで可能」なら項目をチェックする
制限付きで面会を許可している場合は
- 面会時間
- 滞在時間
- 人数
- 持ち込み品
の各項目を事前にきちんと確認しておく必要があります。
不明な点は直接病院に問い合わせましょう。
品物選びの前に、お見舞い自体がOKか要チェックです。
タブーなお見舞い品
そもそもの問題として、コロナ禍以降は衛生面から生花や食べ物全般の持ち込みを禁止している病院も多いので、必ず事前に確認しましょう。
面会でき品物も持ち込めるとわかったら、いよいよお見舞い品選びです。
まずは避けたほうがいい贈り物を把握しておくと、失敗を防げます。
花は「縁起」「香り」「色」に注意
お見舞い品の王道といえば花ですが、一番注意が必要な贈り物でもあります。
鉢植えの花・観葉植物
がタブーなのは知っている人も多いのではないでしょうか。
根があることから「寝(根)付く」を連想させ、病気やケガが長引く暗示となるためです。
鉢植え以外に
ドライフラワー
も「枯れる」「老いる」「死」が連想されるので避けましょう。
花の種類にも注意が必要で
- 名前の語呂や花の特徴から縁起が悪いとされる花
- 香りが強い花
- 不吉な印象を与える色の花
はNGとされています。
具体的な花の種類とタブーな理由は、以下のとおりです。
【縁起が悪い花】
種類 | タブーな理由 |
---|---|
シクラメン | 発音から「死」「苦」を連想 |
キク | 葬儀に使われることが多く「仏花」のイメージが強い |
ツバキ・ チューリップ | 散るときに首の部分から花ごと落ちる |
アジサイ | 時間が経つと色があせる 昔は梅雨の時期に亡くなる人が多かった |
【香りが強い花】
種類 | タブーな理由 |
---|---|
ユリ スイセン フリージア など | 室内に香りが充満し、気分が悪くなる可能性がある |
【不吉な印象の色の花】 ※差し色ならOK
種類 | タブーな理由 |
---|---|
赤一色 | 「血」を連想 神経を高ぶらせる |
白・青メイン | 「葬儀」「お供えの花」を連想 |
紫と白の組み合わせ | 「死」「葬儀」を連想 |
縁起を気にしない人や親きょうだい、親しい友人なら、あまり気にせず本人の好きな種類や色の花を贈ってもいいのでは?とも思いますよね。
しかし家族や同室の患者さんなど周囲の人が不快に感じるおそれがあるため、タブーな花は避けるに越したことはありません。
食べ物は相手の病状しだい
まずは食事制限やアレルギーがないか、あらかじめ本人か家族に確認しましょう。
制限があればダメですし、状況がよくわからない場合も口に入れるものなので避けたほうが無難です。
食べ物の持ち込みがOKでも
- 日持ちしないもの
- 食べる手間がかかるもの
はやめましょう。
たとえば果物は、カゴに入った盛り合わせが昔からのお見舞いの定番というイメージがありますよね。
しかし長く置けず傷む可能性があり、切ったり皮をむいたりする手間もかかります。
付き添いがいない人ならなおさら大変ですし、冷蔵庫があるとも限りません。
ただし日持ちする食べ物の中でも
バウムクーヘン
は本人の希望がない限り、避けたほうがいいとされています。
木の年輪に似た見た目から「長く続く」「繰り返される」が連想され、お見舞いのシーンでは不適切なためです。
なお結婚や長寿のお祝いとしては、反対に喜ばれます。
同じ食べ物でも、シーンによって意味合いが違ってくるので注意しましょう。
ちなみに私の両親が入院したときは、ガムや飴、ペットボトル飲料さえ差し入れ不可でした。
それらのたぐいはOKだと事前に聞いていたので、良かれと思い荷物の中に入れたのですが
「口にしてもいいけど、外からの持ち込みは衛生上ダメ」
と看護師さんから注意されたのです。
患者本人が病院内の売店や自動販売機で購入し、食べたり飲んだりする分にはいいとのことでした。
食事制限などの問題がクリアできても病院ごとのルールがあるため、あわせて確認しておくと安心です。
実用品はケースバイケース
縁起の面から
- パジャマ
- タオル
は避けるべきという考え方があります。
理由は「寝たきり」や「入院の長期化」を連想させるためです。
一方で「入院の必需品なので喜ばれる」という意見もあり、結局どちらなのか混乱してしまいますよね。
相手との関係性にもよるので一概には言えませんが、目上や縁起を気にする人には避けたほうが無難です。
また前提として、パジャマは「前開き」「伸縮性があるもの」など病院が指定している場合があります。
病院指定の業者からパジャマやタオルをレンタルするケースもあるので注意しましょう。
我が家は両親ともパジャマはレンタル、タオルは自前でしたが、タオルは新品を一度洗ってから使っていました。
洗うのは衛生面と好みの問題ですが、人によってはそういったひと手間がかかることもあります。
「忌み数」にも注意
見落としがちなのが、「忌み数(いみかず)」と呼ばれる縁起の悪い数字です。
- 4:「死」を連想
- 6:「無」を連想
- 9:「苦」を連想
シクラメンは「4」と「9」が発音に入っているためタブーとお伝えしましたが、花の本数や菓子などの個数も忌み数は避けたほうがいいとの考え方があります。
気にし出すとキリがないのですが、心配な場合はやめておいたほうがいいでしょう。
お見舞い品には注意を払い、相手に不快な思いをさせないようにしましょう。
オススメのお見舞い品
何かと制限が多いお見舞い品ですが、相手に配慮した品物を選べば喜んでもらえるので安心してください。
選ぶ際は金額にも気をつけましょう。
相手との関係性や地域性にもよりますが、お見舞い品の額は
- 家族や親戚:5,000~10,000円
- 仕事関係:3,000~10,000円
- 友人や知人:3,000~5,000円
が目安とされています。
安すぎるのは失礼ですが、高額でもお返しが大変になり相手の負担になるので、一般的な額の範囲内におさめるのがマナーです。
お見舞い金を渡す場合も相場は同様です。
通常、目上の人に現金を贈ることは失礼ですが、結婚や葬儀、お見舞いなど物入りの際はいいとされています。
とはいえ上司や恩師など目上の人のお見舞いでは、現金や商品券は贈らない傾向にあります。
迷ったら現金ではなく品物にしましょう。
香りが弱くやさしい色の花
タブーが多い花ですが、香りの弱い種類ややさしい色合いなら大丈夫です。
オススメは
- 花瓶が不要な生花のアレンジメントやプリザーブドフラワー
- 種類:ガーベラ・カーネーションなど香りが弱いもの
- 色:黄色・オレンジ・ピンクなどの暖色系
です。
花束はダメではありませんが、花瓶が必要で水換えの手間もありますよね。
花瓶を付けて贈ったとしても、相手の荷物を増やしてしまいます。
生花のアレンジメントや生花を保存加工したプリザーブドフラワーなら、そのまま飾れて気軽に楽しめます。
アレンジメントは花がさしてあるスポンジが乾いたら湿らせればよく、プリザーブドフラワーは水やりの必要すらありません。
「プリザーブドフラワーはお見舞いにふさわしくない」という意見もありますが、「手入れ不要で衛生的なため適している」との見方が大半です。
置く場所が狭くても飾れるように、小ぶりなサイズがいいでしょう。
種類については、香りの弱い花が好まれます。
ガーベラやカーネーションは香りが少なく、バラは黄色なら弱い香りの品種も多くあります。
なおプリザーブドフラワーは香りがないので安心です。
ただしタブーのところでも述べましたが、相手が好きな色でもうっかり赤一色などにしないよう気をつけましょう。
色は、黄色やオレンジのビタミンカラー、ピンクなどのパステルカラーがオススメです。
花の組み合わせに迷ったら、プロである花屋さんに相談しましょう。
イメージを伝えれば、予算に合うアレンジメントを作ってくれるので安心です。
近くに店がなかったり立ち寄る時間を確保するのが難しかったりする場合は、ネット通販で購入する方法も。
事前にサイズ感や仕上がりをイメージできるのが、ネット購入ならではのメリットです。
予算に合わせてオーダーメードで作ってくれるショップ【Flower&Plants tette】もあるので、必要に応じて利用してみてくださいね。
日持ちする個包装の食べ物(のし飾りなし)
食べ物は
- 日持ちするもの
- 個包装
を選びましょう。
果物が意外と難しいことは述べましたが、食事制限などがなければ贈るのはOKです。
同じ果物でも
- ゼリー
- ジュース
- ドライフルーツ
といった加工品なら、事前に用意できて日持ちもしますね。
とくにゼリーは柔らかくて消化にいいので、老若男女にオススメです(プリンもしかり)。
このほか
- 和洋菓子
も定番です。
ただしタブーのところでも触れたように、バウムクーヘンはその見た目から「長く続く」などが連想され不適切なので避けましょう。
なお、お見舞い品には
「のし(熨斗)飾り」なしの「掛け紙」を付ける
のが一般的です。
「のし」は祝儀袋やのし紙などの右上にある飾り、「掛け紙」は水引だけが印刷されたのし紙のことです。
お見舞いの場合は品物の上に直接のし紙をかけ、その上から包装紙で包む「内のし」と呼ばれる掛け方にします。
水引は「紅白5本結び切り」もしくは地域により「あわじ(あわび)結び」、水引の上の表書きは「御見舞」などとします。
病状が深刻な場合は水引なしにしたり地域によって異なったりもするため、とくに目上の人や年配の親戚に贈る場合は事前に確認しておくと安心です。
水引の下には自分の名前を書くことも忘れないようにしましょう。
「掛け紙」などのルールに自信がなければ、ギフト専門店や百貨店のギフトコーナーなどで相談するといいですよ。
暇つぶしに役立つ物
入院生活は具合が悪いときは暇つぶしどころではありませんが、落ち着いてくると診察や食事以外は退屈で長く感じるものです。
そんなとき
- 本・雑誌・マンガ
- パズル
- ぬり絵&色鉛筆のセット
などがあれば気がまぎれます。
ただし本は分厚かったり量が多かったりすると荷物になりますし、パズルやぬり絵は複雑だと疲れさせてしまい本末転倒になるので、ほどほどのレベルのものにとどめましょう。
あくまでも相手の負担にならないアイテムにすることがポイントです。
本は内容にも注意してください。
深刻な中身だと、ただでさえ不安な気持ちを増大させてしまいかねません。
私は両親に渡す際、「終活」などの特集が載っている雑誌は避けるようにしていました。
シニア層向けの雑誌に結構多いテーマなんですよね……。
写真集やエッセイなども、気軽に手に取れるのでオススメです。
相手の好みを考えつつ、気持ちが和んだり気晴らしになったりする品物がいいですよ。
お見舞い時のマナー
お見舞い品が決まったら、必ず本人か家族に連絡を取ったうえで訪問する日時を検討しましょう。
先に述べた人数や時間帯を守るのはもちろん
- 入院直後
- 手術前後
は迷惑なので避けましょう。
実際に訪れたら
- 会話の内容に配慮する
- 声の大きさに気をつける
- 短時間で切り上げる
といったことにも努める必要があります。
会話の内容に配慮する
病状については
相手が積極的に話したがらないなら、しつこく聞くのは控える
べきです。
一番気になる点なので、ついあれこれ聞きたくなりますよね。
まったく聞かないのは不自然ですが、相手があまり話したがらない様子なら話題を変えましょう。
不安を感じていて触れたくないのかもしれません。
また相手が仕事関係の人の場合は、うっかり職場のグチなどをこぼさないよう注意しましょう。
なるべく明るい話題を心がけることが大切です。
声の大きさに気をつける
いくら「明るく」といっても、大きな声を出したり騒いだりするのはもってのほかです。
話が盛り上がると声が大きくなってしまいがちですが、ほかの患者さんの迷惑になります。
もし可能な状況なら
談話室などを利用する
と落ち着いて話せますよ。
私は友達をお見舞いしたとき、場所を変えたらいろいろと話してくれました。
相部屋だとほかの人にも聞こえるため、話したくても話せないことがありますよね。
ただし体が最優先なので、無理に移動するのはやめましょう。
短時間で切り上げる
滞在時間は病院側が指定しているケースも多く
- 15~20分程度
- 30分以内
が目安のようです。
指定の時間にかかわらず、様子をみて短時間で切り上げましょう。
疲れさせてしまっては元も子もないので、長居は禁物です。
お見舞いは「明るい話題」「周囲にも配慮」「短時間」を心がけましょう。
お見舞いに行けなかったら
病院の制限や相手の病状などにより、お見舞いに行けないこともあります。
その場合は
- 家族がいれば自宅に品物を郵送する
- 後日あらためて退院祝いを贈る
などほかの方法に切り替えましょう。
中には宅配便の受け取りに対応している病院もありますが一部に限られ、あまり現実的ではないように思います。
気になる場合は、直接病院に問い合わせてみてください。
家族がいれば自宅に品物を郵送する
同居する家族がいるなら
手紙を添えて自宅に品物を郵送する
という方法があります。
手紙は
- 便せん1枚におさめる
- 「くれぐれも」など重ね言葉を使わない
- 追伸は書かない
点に気をつけましょう。
いずれも「不幸を繰り返さない」という意味があります。
「くれぐれもご自愛ください」といった表現は、つい使ってしまいそうですよね。
親しい間柄ならそこまで気にしなくてもいいのかもしれませんが、知っておくに越したことはありません。
後日あらためて退院祝いを贈る
お見舞いにこだわらず、「退院祝い」として贈る方法もあります。
その際は
- 退院後1週間から1カ月以内に贈る
- 水引は「紅白結び切り」、表書きは「祝御退院」などとする
ようにしましょう。
「のし飾り」については
- 退院しておめでたいので付ける
- 「のし」は「長く続く」という意味を持ち「病気やケガが長引く」ことにつながるため付けない
と考え方が分かれます。
お見舞い品と同様に付けないほうが無難ですが、心配なら贈答の扱いに慣れているギフト専門店などで購入することをオススメします。
もし時間がたってしまったら、表書きは
- 完治しているなら「祝御全快」「祝御回復」
- 完治していないなら「祈御全快」「祈御回復」
とします。
水引やのし、贈る品物の内容や金額は基本的にお見舞いと同様です。
なお「快気祝い」は病気だった人がお見舞いのお返しやお世話になった人へ贈るものなので、混同しないように注意してくださいね。
「病院に行ってお見舞いする」ことに、こだわりすぎないようにしましょう。
まとめ:相手の病状や気持ちに配慮した品選びが大切
お見舞いにはとりわけタブーが多く、思わず尻込みしてしまいますよね。
しかしあげていいもの・いけないもの、訪問時のルールなど事前の下調べさえしっかりしていれば、心配する必要はありません。
ややこしい「掛け紙」などの決まりもあったりと確かに面倒なことは事実ですが、そうしたマナーの背景にあるのは
相手を尊重する心
です。
病気やケガで気落ちしている相手に少しでも元気になってもらえるよう贈り物は慎重に選び、大切に思っている気持ちを伝えましょう。
マナーはやっかいに感じるかもしれませんが、いい関係を築くための「思いやり」です。
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